2023年2月6日(現地時間)に、米GoogleがLaMDAを取り入れた会話型AIサービスのBardを発表しました。

そんなGoogleに引き続き、米Microsoftは2月7日(現地時間)、米OpenAIの次世代大規模言語モデル採用の「新しいBingとEdge」を発表しました。

新しいBingとは?

2023年2月8日現在、Microsoftはこの新しい検索方法に対して、Googleの「Bard」のように独自の名称を付けていません。公式では、「Webの副操縦士」というテーマを付けており、界隈では「新しいBing」として扱われています。

また、採用するエンジンはOpenAIの「ChatGPT」の言語モデル「GPT-3.5」ではなく、「OpenAIのモデルを使う独自開発の」次世代言語モデル「Prometheus」(プロメテウス)ということです。ChatGPTのトレーニングデータは2021年までのものだが、サンプルの質問の答えにはより新しい情報(2023年に開催される音楽フェスなど)が含まれている模様です。

また、新しいEdgeにはチャットとコンテンツ作成のサイドバーが表示されるようになり。チャットには、ユーザーが表示している例えば長い財務報告書の要約を表示し、チャットで競合他社の財務との比較を求めたり、その結果を表にまとめたりできる。また、Microsoft傘下のLinkedInへの投稿用コンテンツ作成を依頼することもできるという。

公式ブログより特徴を抜粋いたしました。

より良い検索

新しい Bing は、使い慣れた検索エクスペリエンスの改良版を提供し、スポーツの試合結果、株価、天気などの単純な事柄に対してより関連性の高い結果を提供し、必要に応じてより包括的な回答を表示する新しいサイドバーを提供します。

完全な回答

Bing は Web 全体からの結果をレビューして、探している答えを見つけて要約します。たとえば、複数の結果をスクロールせずに、その瞬間に焼いているケーキの別の材料を卵で置き換える方法の詳細な手順を取得できます。

新しいチャット体験

詳細な旅行日程の計画や購入するテレビの調査など、より複雑な検索の場合、新しい Bing は新しいインタラクティブ チャットを提供します。チャット エクスペリエンスでは、詳細、明確さ、およびアイデアを求めることで、求めている完全な回答が得られるまで検索を絞り込むことができます。リンクを利用できるので、決定にすぐに対応できます。

創造的な花火

答え以上のものを必要とする時があります – インスピレーションが必要です。新しい Bing は、役立つコンテンツを生成できます。メールを書いたり、ハワイへの夢の休暇のための 5 日間の旅程を作成したり、旅行や宿泊施設を予約したり、就職の面接の準備をしたり、雑学クイズを作成したりするためのリンクを作成するのに役立ちます。新しい Bing もすべてのソースを引用しているため、参照している Web コンテンツへのリンクを表示できます。

新しい Microsoft Edge エクスペリエンス

新しい AI 機能と新しい外観で Edge ブラウザーを更新し、チャットと作成の 2 つの新しい機能を追加しました。Edge サイドバーを使用すると、長い財務レポートの要約を求めて重要なポイントを得ることができます。その後、チャット機能を使用して競合他社の財務との比較を求め、自動的に表にまとめます。また、LinkedIn の投稿などのコンテンツの作成を支援するように Edge に依頼することもできます。その後、投稿のトーン、形式、長さを更新するのを手伝ってもらうことができます。Edge は、ユーザーが閲覧している Web ページを理解し、それに応じて適応します。

(引用:Microsoft公式ブログ / Reinventing search with a new AI-powered Microsoft Bing and Edge, your copilot for the we より)

実際の新しいBingの画面

ここではすでに用意されている12あるテンプレートのやり取りを抜粋して取り上げてみます。

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https://www.bing.com/new?form=MY028Z&OCID=MY028Z&scdexwlcs=1&setlang=ja&sid=3F6B7AC7E1286C7613216875E0C26D8A

ここでは、最上段真ん中の「特別な記念日の旅行の計画を手伝ってください」を選んでみます。

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すると、「9月に結婚記念日の旅行を計画してるんだけど、羽田か成田から3時間以内で行けるいいところを教えて。」と検索窓に入力され、そこに対する検索結果および、AIの回答が表示されているブラウザの画面が表示されています。

まるで人間同士の会話のように、問いかけている情報量が多いにも関わらず、ナチュラルな返答が返ってきております。

テンプレートではこれ以上AIを利用することはできませんが、その下には「グアムにいきたいです」「台湾に行きたいです」などと会話を続けるヒントや導線が提案されています。

これは検索リテラシーの低いユーザーにとっては非常に有益である反面、自分で検索するリテラシーを持つユーザーはどういった反応を示すのか興味がありますね。

新しいBingを利用するためには?

先ほど紹介したテンプレート以外で、自由に使えるためには、順番待ちリストに参加する必要があります。

さらに、その中でも優先して順番待ちを進めるためには、

  • Edgeをデフォルトブラウザに設定
  • モバイル版Bingをスマートフォンにインストールすること

となっています。

いずれもMicrosoftアカウントでのログインが前提となってるため、必要に応じて検討してください。
Twitterでは、「メールアドレスの登録だけで良いだろう!」などの怒号も飛んでいましたが笑

順番が回ってきた場合は、Microsoftのアカウントにメールで通知が来るので、こまめに確認しておきましょう。

新しいBingはリスク対策もバッチリ?

Microsoftは、「AIは間違いを犯す可能性があります」「内容は説得力があるように聞こえるが、不完全、不正確、または不適切な応答が表示される場合があります。Bingの対応に基づいて決定を下したり行動したりする前に、あなた自身の判断を使用し、事実を再確認してください」と注意を促しています。

また、

「OpenAI とともに、有害なコンテンツから防御するためのセーフガードを意図的に実装してきました。Google のチームは、 AI の原則に沿って、誤った情報や偽情報、コンテンツのブロック、データの安全性、有害または差別的なコンテンツの宣伝の防止などの問題に対処するために取り組んでいます。

私たちが OpenAI を使用して行っている作業は、当社の AI システムが責任を持って設計されていることを確認するための当社の長年にわたる取り組みに基づいています。私たちは、リスクを軽減するための新しいアプローチを開発するために、研究者、エンジニア、政策専門家を含む責任ある AI エコシステムの強みを引き続き活用していきます。」

https://blogs.microsoft.com/blog/2023/02/07/reinventing-search-with-a-new-ai-powered-microsoft-bing-and-edge-your-copilot-for-the-web/

また、AIがあるエリアの右上には1クリックで回答を評価することもできるようになっています。ユーザーからのフィードバックを繰り返していくことで、より質の高い回答を期待できるでしょう。

新しいbingを実際に使ってみた

※2023年2月追記
順番待ちメールが全然来ないため、不本意ながらEdgeのダウンロードや、スマホアプリを入れてみたりしたところ、速攻で使えるようになりました。(なんともしたたか。)

私はバスケットボールが好きなので、まずはバスケに関する質問を投げかけてみました。

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すると、おもしろいのが、AIの回答を表示する前に「’日本人 バスケットボール 選手 海外’ を検索しています」と表示されます。おそらく入力されたテキストから、核となるキーワードを抜粋して、その検索結果の取りまとめをAIの回答としているのでしょうか。

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少し待つと、回答が表示されます。

上にスクロールすると、AIとの対話画面にスクロールされる

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回答が投げられた後に、上にスクロールすると、AIとの対話専用画面にスクロールされます。

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ここで面白いのが、関連した内容の表示や、どの文章にどのソースを使っているのか記載されていることです。

情報の正確性はちょっと怪しい

そもそも、情報の正確性についてですが、なんとも言えません…。
このバスケというテーマが少し難しいのでしょうか。

前半の内容は概ね合っています。

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本記事執筆時の2023年2月現在、確かに海外でバスケットボールをプレイしている選手は少ないので、冒頭の文章はOKでしょう。海外といっても、ヨーロッパリーグや欧州のリーグなどさまざまで、中でもNBAと呼ばれるアメリカのバスケットボールリーグは世界で最も入り口の狭いプロスポーツと言っても過言ではありません。

八村選手の情報は問題ないかと思います。「渡邉雄太」選手は、確かに過去「メンフィス・グリズリーズ」というチームに在籍していた時期もあったのですが、現在は「ブルックリン・ネッツ」というチームに所属しており、まあ間違ってるとまで言わなくても良いラインでしょうか…。

また、後半の文章はちょっと不正確ですね。なんというか惜しいです。細かくみていきます。

・田中大貴:実際にいる日本のバスケ選手。しかし、海外の大学に居たソースはない。(日本の大学出身です)

・松村太一:そもそもその名前の選手がいない。(2023年2月現在、ネブラスカ大学でプレイしている日本人はいるので、惜しい)

・渡邉拓馬:過去、日本代表として活躍した選手、現在は引退。しかし海外でプレイしたソースはなし。

情報が断片的に合っているものの、うまく噛み合ってない感じはありますね。
日本語は違和感がないので、知らない人からすればそれっぽく感じます。

私は個人的にバスケットボールファンなので、すぐに違和感を感じましたがw
(断片的に情報が合っているのが違和感を感じさせづらい?)

詳細情報(引用)の出典元は?

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また面白いのが、実際に回答を見ると、「出典(ソース)」的な表示がされています。SEO担当者としては、ここに引用されることを一旦は目指すべきでしょうか?

ただ、面白いのが、AIが最初に教えてくれた「’日本人 バスケットボール 選手 海外’」というキーワードの検索結果上位10サイトのうち、1サイトしか引用元として表示されていません。

そもそも情報の正確性などを考えると、なんとも言えないのですが。

実際に引用しているサイトを確認してみたところ、「韓国のリーグでプレイ経験のある、現日本リーグ所属の選手記事」など、「それ紹介すれば良いじゃん」みたいな記事もありました。引用元の内容が正しいのに、AIの回答としては使用されていないといった様子です。

また、唯一上位1ページ目の引用されているサイトには、「渡邉雄太選手は、ブルックリン・ネッツ所属」という内容が記載されているものの、引用しているのに情報が最新のものになっていないなどの違和感がありました。

他にも「引用している記事を見ても、そんなこと全く書いてないよ」なんてことも…。

まだまだ出始めなので、ツッコミどころはあるのでしょう。また検索する内容に応じて、どのくらいの精度で返してくれるのか気になるところです。

引き続き、さまざまなキーワードでBingのAIを使い倒してみます。

他のキーワードでも試してみた(おまけ)

「もう少しカジュアルなテーマなら!」ということで、

「40代男性が楽しめる渋谷のご飯屋さんを教えてほしい」という質問を投げかけました。

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回答はそれらしい回答なのですが、いかんせん情報が不正確です笑

最初に提示されている「ヴィラ・デ・モンテ」は調べてみたところ、そのような名前のお店がありませんでした。「ヴィラ・ディ・モンテ」というワインの種類がある様で、参照サイトからイタリアン繋がりで拾っているのかな?と思い、参照サイトを確認したところその様な記載は無し…。

「鮨 ひらやま」もそれっぽいですねぇ。錦糸町にあるお寿司屋さんでした。存在するお寿司屋さんではあるものの、渋谷からはかなり離れてしまいました。

2段落目の、「韓国家庭料理 ひゃん」も存在はするものの、足立区の北千住にあるお店の様で、これまた遠い。「麻婆豆腐専門店 陳麻婆豆腐」も「陳麻婆豆腐」というお店があるものの、赤坂や新宿と少し遠い…。

3段落目の「ラ・ベットラ・ダ・オチアイ」も銀座のイタリアン、「バル・デ・タパス」は春日の方に、「バル デ エスパーニャ タパス」というお店がありました。

AIに対する投げかけが、非常にシビアなのは理解しているので、おそらく「渋谷の」などと安易な問いかけを拾えてもらえていないのでしょうね。

本来であれば、「東京の渋谷にあるお店」や「東京都渋谷区の飲食店」など、また、「の」ではなく「にある」など接続に使用する言葉もシビアなのでしょう…。

ただ、この会話の汲み取り方がシビアすぎると、ユーザーにとってはストレスですよね笑

今後の進化に期待です…。

SEO担当者が必要なことはAIの解答をさらに先回ること

イラスト生成のNovelAIをはじめ、AIが普及・話題になるということは、何も今に始まったことではありません。

スタートアップ企業や小さなコミュニティで楽しまれていたものが、近年のビッグテック企業の参入により急激に台頭してくるようになったという様子です。

先日の、GoogleのBard発表も大きな話題となりました。

このようにAIが台頭してきてしまうと、もはやAIbotのみでやり取りが完結してしまうのでは?SEOや広告の意義は?などと少なからず感じてしまいます。

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そんな中で我々ができることとしては、

  • ユーザーの検索クエリが大きく変わるであろうことを念頭に入れておく
  • AIに質問するであろうクエリを予測して、その回答となるコンテンツを用意する
  • さらに言えば、AIの一歩先を行く回答コンテンツを目指す
  • AIの回答に引用されることを目指す(結構重要)

あたりになるでしょうか。

「AIの回答に引用されることを目指す」が大切だと感じたのは、今回のバスケ情報のように、情報が不鮮明・もしくは違和感を感じた際にサイトへの流入のきっかけになると思ったからです。

また、「AIを使用したことでソースの確認・正確さの検証」などを行う必要も出てくるでしょう。
その際にも同じく、ユーザーの流入のきっかけとなる可能性があります。

この辺りは、さらに別記事でお話をしていこうと思います。

この記事が多少なりとも、お役に立てばと思います。
記事を読んで不明な点等がありましたらお気軽にTwitter(@kaznak_com)などでご質問ください。

ではまた。